大判例

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東京高等裁判所 昭和62年(う)356号 判決

被告人 星学

〔抄 録〕

所論は、被告人は本件現場において本件爆発物の時限装置をセットする作業中、いまだ爆発させるべき刻限をセットし終っていない時点で誤爆させたものであって、これは爆発物取締罰則一条の「爆発物ヲ使用シタ」ものにはあたらないのであり、原判決には、この点について、事実誤認ないし法令適用の誤りが存するというのである。

しかしながら、原審取調べにかかる関係各証拠によると、本件爆発物は直径五ないし六センチメートル、長さ約二〇センチメートルの鉄パイプ製のもので、これに電気式起爆装置が備えられ、その起爆装置を作動させるために長さ約三〇センチメートルのコード二本によってぜんまい式の時計と電池ホルダーとが右鉄パイプ内の電気式起爆装置に接続され、この電池ホルダーに単三電池一本を入れて起爆装置の電源とし、時計の長針が文字盤上の6の数字の上に来ると右コードを通じて、右電気式起爆装置に電流が流れて爆発を起こす仕組みになっていたものであるところ、被告人が本件現場で本件爆発物を爆破対象物であったモーターボートのギアユニットカバー上に置いた時点では、すでに時計のぜんまいは巻かれて長針は作動を開始した状態になっており、かかる状況下において被告人は電池ホルダーに単三電池一本を装填して時限爆発装置を完成したこと、しかる後被告人は一定時間後に爆発させるべく、右時計の裏のつまみを廻して長針を動かした際に、本件爆発物が爆発したものであることが、それぞれ認められるのであり、これらの事実によれば、被告人が本件爆発物を本件モーターボート後部に置き、これに接続する電池ホルダーに電池を装填した時点では、時計の長針はすでに動いていて、そのまま放置すれば一定時間後にはそれだけで自動的に爆発する状態になったのであるから、その時点で本件爆発物はすでに「一般的に治安を妨げ、または犯人以外の人の身体もしくは財産を害するおそれのある状況下において爆発物を爆発すべき状態」(最判昭四二・二・二三刑集二一巻一号三一三頁)に立ち至っていたものというべく、その後被告人の操作ミスによって被告人が爆発を意図していた時刻前に、被告人の意に反して爆発が起ったという事情の如きは、被告人の本件所為が爆発物の使用にあたるか否かの判断に何らの消長をきたすものではないことは、原判決が説示するとおりといわなければならない。したがって、原判決には所論のような事実の誤認も法令適用の誤りも存しないことは明らかであり、所論は採用できない。論旨は理由がない。

(石丸 小林 日比)

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